ホットプロジェクト
再生可能エネルギー導入における鳥類との共存にむけて
東京支店 環境部環境課 グループリーダー 2009年入社 低炭素化社会にむけ、国内では再生可能エネルギーの導入が推進されています。なかでも、風力発電事業は太陽光発電事業と並び、国内における再生可能エネルギーの主力電源として注目が集まり、風況の良いエリアでは洋上風力・陸域の風力事業を問わず多くの事業が進みつつあります。 こういった新たな風力発電事業の手続きには、法令で定められた環境アセスメントが必要ですが、弊社ではこの環境アセスメントの評価項目のなかでも、開発行為によって影響を受けやすい希少猛禽類や、バードストライクのリスクを孕む渡り鳥等の調査項目を積極的に請け負っています。 弊社は、これまで多くの民間企業様に風力発電事業に係る環境アセスメントの一環として配慮書段階からアセスメント図書作成支援を行い、調査地点・手法の選定を行う方法書の作成支援、現地調査から調査結果をとりまとめた準備書の作成まで対応してきました。これまで対応してきた調査の実績を活かし、現在の取り組みの一部についてご紹介致します。
洋上風力発電事業における鳥類調査
昨今の追い風となっている洋上風力発電事業は、再生可能エネルギーの主力電源の一つでもあり、ここ数年間で最も事業が増加しました。アセスメントの項目のなかには、海鳥を含む鳥類調査の他、希少猛禽類調査、渡り鳥調査等があり、鳥類にとって洋上風力が脅威とならないか十分調査を行う必要があります。
海鳥を含む鳥類調査は、主に地域の関係漁協様と連携して傭船し、船舶トランセクト調査や船舶定点調査といった定量的に鳥類を調査する手法で臨みます。弊社では、地域の関係漁協様と軋轢が発生しないよう、人間力を活かして調整段階から携わり、円滑な傭船実績を積み重ねるとともに、柔軟な工程調整能力で好天を逃さず調査に従事してきました。
船舶トランセクトは、机上設定した測線をGPSで誘導し、一定の船速で航行、左右舷で確認された海鳥を記録していく手法です。波間を抜ける海鳥の他、渡りの時期には民家付近で見られる鳥類も、海上を渡っている様子が見られることもあり、識別は容易ではありません。熟練した調査員とともに防振双眼鏡を用いるほか超望遠レンズを船上で使用できるよう加工して臨み、個体数密度の低い重要種の発見とその記録に努めています。 確認された鳥類のレコードは、社内に持ち帰りGPSの航跡と確認時刻等から初認位置をGIS上でマッピングし、定量的に評価できるよう加工、成果物に寄与しています。
陸域風力発電事業における鳥類調査(希少猛禽類・渡り鳥調査)
風力発電事業において、風況の良い沿岸部や山間部の尾根沿いは、オジロワシ、ミサゴ、及びクマタカ等の希少な猛禽類にとっても重要な生活圏であるほか、渡り鳥にとって主要な移動経路となっているケースが多く、十分調査を行って、事業が与える影響を最低限にする必要があります。 弊社では、条件の厳しい山岳地帯や積雪地帯における猛禽類・渡り鳥調査も多くの実績があり、安全かつ効果的な地点配置と調査時間の設定で渡り鳥の日周の動きを効率的に把握するほか、事業が与える影響が大きい営巣地の特定を迅速に行い、予測評価に必要な飛翔軌跡の取得に努めています。 渡り鳥調査の調査時期は、秋の渡来期と春の北帰期に分けられますが、豊富な経験に基づいた渡りのピークを狙った調査時期の設定と体制づくりに注力しています。特に、ガン類・ハクチョウ類等の水禽類は調査期間中に採食場所や塒等を把握したうえで調査に臨み、地域に訪れる渡り鳥達の日周の動きを把握するほか、好条件下で移動経路の確認を行うよう尽力しています。 取得した飛翔軌跡は、GISで整理を行い行動圏解析・営巣適地解析・餌場適地解析に用いて、事業が与える影響を定量的に予測評価できるよう努めています。