ホットプロジェクト
有明海のアサリの生産性向上に向けた取り組み
水産エンジニアリングカンパニー 2015年入社
弊社は、これまでに現場を重視した防災および環境のリスクコンサルティングに取り組んでおり、自然環境と人間を調和させるインタープリターとなることをモットーに業務を行ってきました。
その中でも水産エンジニヤリングカンパニー(以降、水産EC)では漁港施設の維持管理・有効活用や漁場環境改善業務に携わってきました。特に、長崎県諫早市の小長井オフィスでは、
有明海を中心とした海域、干潟域での漁場環境調査や漁場環境改善事業を主要業務としており、今回この中の取り組みとして島原地先と小長井地先で行っているアサリについてのプロジェクトについてご紹介します。
島原地先での挑戦
近年、アサリの全国的な生産量は低迷しており、10,000トンに満たない状況(1983年のピーク時は160,000トン)となっています。
また、アサリの産地偽装が問題となってから、国産アサリの需要が高まっています。そのよう中、島原半島沿岸域でアサリを採苗し、
育成するプロジェクトに取り組んでいます。この島原半島沿岸域では、本来アサリを漁獲対象としておらず、天然アサリの着底状況や生息状況の調査から効率的採苗・育成方法の検証までゼロから始めたプロジェクトとなりました。現在、砂利をラッセル生地の網袋に詰めて干潟に置くことでアサリを採苗し、網袋に入れたまま1~1.5年育成することで殻長25mm以上のアサリを採取できるところまで至っています。さらに、この成果が地元漁業者や島原漁業協同組合に評価され、島原地先におけるアサリ養殖のための区画漁業権を取得することとなりました。この区画漁業権の取得の際にも、長崎県、島原市、および島原漁業協同組合に協力し、無事に取得することができました。今後は、実際の島原でのアサリ漁獲に向けて、方法の改良や効率化を検討し、最終的には地元漁業者への普及を目指しています。
小長井地先での挑戦
長崎県諫早市小長井地先は島原地先と異なり、アサリ養殖がもともと盛んに行われている場所で、長崎県の年間漁獲量の大部分が、
この地先の養殖によるものとされています。しかし、小長井地先を含めた長崎県の漁獲量は、近年200トン前後と低迷しており、小長井地先においても「地元産」の天然アサリの漁獲量が減っています。
その原因としては、食害や逸散、夏場の高水温、低塩分、貧酸素の影響が大きく、これらの対処方法を長い間検証してきました。
食害や逸散については、島原地先と同じく砂利を入れたラッセル生地の網袋を用いることで防ぐことができましたが、夏場の高水温、低塩分、貧酸素への対策は長い間課題でした。
現在、夏場の高水温、低塩分、貧酸素の対策として、5~7月にアサリを漁獲してしまい、夏の減耗リスクを回避する方法が最も効果的であることが分かりました。この方法の特徴は、漁獲サイズのアサリが減耗する前に漁獲することで、アサリの漁獲量を増やすだけではなく、漁獲しない小さなアサリを網袋に戻すことで、次の年の漁獲量も向上します。このプロジェクトの最終的な目標は、地元漁業者へ普及することです。地元漁業者への普及は、なかなか進んでおらず課題も多くありますが、まず第一歩として、漁獲したアサリを諫早湾漁業協同組合へ卸し、漁獲実績を漁業者に示すことで普及に繋がるように取り組んでおります。実際に1トン程度漁獲して諫早湾漁業協同組合に卸したアサリは、組合の直売店で店頭に並び、1㎏1500円で飛ぶように売れました。今後も、このような漁獲実績を積み上げて、漁業者への普及を目指します。